拓け、新たなる世界

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本編

 今一度戻ってきたアルマとヴェルヌは黒岩の砦の地下にできた広間に感動し、ほぼ絶叫に近い声を上げた。
「すげえええええええええ!」
「すごおおおおおおおおお!」
 その二人の興奮具合にパブロは笑いながら、出迎える。
「この方が?」
「ああ。うちで技術者をやってくれることになったヴェルヌだ」
「よろしくお願いします。ヴェルヌ=メイクです! 地下これどうやったんですか!?」

 早速黒岩の砦の基地に食いついたヴェルヌはパブロに説明を求めた。

「恐らくアルマさんから話を聞いていると思いますが、人間種魔人種ともに敵対するとなると、下手に表立って行動はできません。ですので大きな戦力を手に入れるまでは地下に基地を広げることで周りからばれないようにするという魂胆です。すべては土魔術に長けた者たちが」
「凄い。わかるかな? アルマさん。基本的にこういう地下空洞ってのは空気穴がないと魔力も活性化できないし、なにより呼吸ができなくて死んでしまう。だけどここは階段で繋がってるのもそうだけど、転移の魔方陣を少し弄ることで、地表に触れた空気をこちらに転移させるようになってる。下手に空気穴をあけると、強度が落ちるからねえ。考えられてる」
「そ、そうなのか。よくわからないが凄いみたいだな」

 わかっていないリアクションにヴェルヌは不満そうにアルマを見ながら、頬を膨らませる。

「それでなぜこの方を?」
「ヴェルヌは魔素を魔力に還元する装置を作れるんだ。今はそういった転移の魔方陣も魔晶石から供給しているんだろ?」
「そうだね。魔晶石からだと一定の供給がないと動かなくなっちゃう。まずはこういった設備の完全自動化が必要だ。でもこんなことができる人たちがいるってことは、全部自分でやるより教えた方が早いかもしれない」
「ほう。魔素から魔力を。でしたら、こちらで技術面に長けた者を選出しましょう」
「ああ。ヴェルヌは基本的に自由に動いてもらった方が良い発想が生まれる気がするんだ。だからパブロもヴェルヌからの技術的要望はなるべく応えてほしい」
「わかりました」
「技術班の結成だね!」
 
 ヴェルヌは腕まくりをして、気合いを示して見せる。

「よろしく頼む。で、その自動化ってのも大事なんだが、俺が考えていた設備を聞いてもらっていいか?」

 パブロとヴェルヌはワクワクとした様子で、アルマの話を聞いた。

「まだ早い話かもしれないが、もし強大な戦力を有した際、その数は凄まじい数になるだろう。構想で言えば、獣人も、魔人も、魔物も全種族を受け入れるわけだからな。だが今の王国軍や冒険者のように人を駒のようには絶対に扱いたくないんだ。もし数が多くなったら同じ種族でも知らないやつってのは必ず出てくる。でもそういった知らないやつでも大切に思い、思われてるはずなんだ。だから俺たちの戦力は不死隊を銘打つ」
「死なない軍隊……」
「聞いたことあるよ。書院の文献で読んだんだ。死んでもまた新しい人を補充して、ってのを繰り返して数が変わってないから不死のように見えるっていう。でもそれってアルマさんが言う全員を大切にする構想とはかけ離れてるというか、正反対の考え方じゃない?」
「ああ。文献通りだとそうだ。だけど俺が考えてるのは、死を直観したり、致命的なダメージを受けたら、そこに魔力をマーキングしたうえで、転移を発現して、拠点に戻して、すぐに治療する。そしてまだ戦う意思のある者はもう一度その魔力をマーキングした地点に戻すっていう設備だ」
「ふむ、それであれば皆死ななくて済みますね」
「とっても難しそうだけど、面白い。死なない軍隊じゃなくて、死ななくて良い軍隊なんだね」
「その致命的ダメージを受けたら転移をするっていうのは、これを参考にしてくれたらいい」

 といって王国軍選抜試験のサバイバル試験の際に使われた身体に結界を張る指輪をヴェルヌに渡した。イレイスとのいざこざによって返却し忘れていたものが、幸運なことにクロノスの懐に入っていた。

「できそうか?」

 アルマとパブロはヴェルヌの返事に期待して、悩み考えるヴェルヌの姿を見守る。

「うーん、多分戦争になった時に転移してくる人の量ってのは半端ないはずなんだよね。だから|治癒術士《ヒーラー》を置いておいても、多分数が足りない。だから|治癒術士《ヒーラー》を置いておく転移先じゃなくて、おっきなホールを作って、そこにでっかい魔方陣を書いてさ、ホール一個を全部医療設備にしちゃえばいいと思う。でも血がなくなった人を助けるにはやっぱり人が必要だから、転移の条件に出血量を設定するべきだ。だから身体の損傷判断、血液の損失判断、転移、マーキング。少なくともこれを一回に行わなきゃいけないわけだよね。死にかけだと魔力もまともに扱えないと思うから、魔晶石自体にそういった陣を刻み込めばって思ったけど、それじゃあ使用の意思が必要で、敵に奪われたら本拠地を襲われることになる……」
「俺のあんなに適当な説明で、今ぱっとこんなに思いついたのか?」

 驚きが隠せないアルマとパブロはとんだ逸材を連れてきてしまったとワクワクしながら笑い合う。

「そうだねでもこれじゃあ完成じゃない。どういう形でそれを認識して自動化するか。指輪か。違う。ネックレス。心臓。心臓の近くに計器でも埋め込む。いやそんなもの身体に入れられない」
「人体方陣……」
「人体方陣なら、生命の強弱を魔力の流れで完治させられるし、恐怖に負けた時は自分の意思で転移も行える。そうだよ! 人体方陣! 全員にいれるんでしょ!? それに組み込めばいいんだ!」

 ものの五分もかかっていないか。だがこの反応を見るにヴェルヌは今、この数分間でアルマの言った不死隊の構想を、ほぼ現実へ近づけてしまった。

「もしかして頭の中でほぼ完成したのか?」
「いや、まだ詰めが甘いところがたくさんあると思う。だから色々試すけど、構想は立った。でもまず人体方陣私に刻んでよ。どんなものか知りたい」
「もうか? 人間種にとっては禁忌なんだぞ? もっと信頼とか」
「いやそういうのは必要ない。早くやりたいんだ。それとも君は私を傀儡人形にするつもりかい? してどうする? 体のメリハリがいい女なんてもっとそこら中探せばいるだろ? そんなことしてもメリットにならないなんてわかってる。早く」
「わかった。でも人にやるのは初めてだから」
「意気地なし。早くやんなよ!」

 ヴェルヌの勢いに押され、アルマはしぶしぶヴェルヌに人体方陣を組み込むことになった。
 心臓に独立魔力を組み込むという性質上、魔方陣は心臓に一番近い左胸に刻まなければならない。だからアルマは一度ヴェルヌと共に別室に移り、そこで行うことにした。

「先に行っておくが、魔物の魔力を身体に流し込むから、身体になんらかの変異が起きるかもしれない。それこそ俺の左手みたいにな。そしておそらくこれは確実なんだが、数日は熱にうなされる日々になる。研究欲を邪魔するようで悪いが、研究は完全に熱が引いてから。誓ってくれ」
「わかった。誓うよ」

 明らかに軽い反応を示すヴェルヌに不安を抱きながらも、アルマは仕方なしに魔方陣の生成を始めることにする。

「じゃあ上着を」
「はい」

 躊躇なく上着を脱ぎ捨てたヴェルヌに驚きながらも、その視線は意識せずとも下に向かう。

「じろじろ見せるために脱いだんじゃないんだから」
「すっすまない。じゃ、じゃあ触るぞ」
「もう!」

 突然叫ばれたアルマは体をビクンと震わせて、手を引っ込めた。

「いちいち確認とらなくていい! 寧ろそんな反応をされた方が恥ずかしい!」
「わ、わかった」

 そういったアルマは一度ゆっくり深呼吸をしたのちに、静かにヴェルヌの胸に触れる。心地の良い柔らかさの中心には感触が違うものがある。なるべく意識しないように、アルマは自らの身体の中にある独立魔力を右手へと持ってきた。それと同時に|紅魔眼《マジックセンス》を発現し、ヴェルヌの心臓に通る太い霊管を捉えた。そして自らの魔力で独立魔力の一部を切除し、それを掌へと近づけていく。

 どれくらいの量を使えばいいかは、体感で分かっている。この量が多ければ多いほど、魔物に身体を侵され、アルマのように腕が人のものでなくなったりする。だから一パーセントよりも小さい。ゼロコンマの量を切り取り、ヴェルヌの心臓へと流し込む。

 そしてその独立魔力が霊管に入れるよう、アルマの魔力でこじ開ける。

「うぅ」
「大丈夫か?」
「う、うん。ちょっと苦しいけど」

 霊管を通っているのは、身体の器官の働きを助けている生体魔力だ。それが外部の力によってこじ開けられ、外に流れ出ていると考えると、心臓に行くはずの生体魔力が足りていないことになる。
 軽い不整脈のような症状が出てしまっているのだろう。早く終わらせないと命に関わるかもしれない。

 アルマは急ぎ、霊管の中に独立魔力を流し込み、こじ開けた霊管を自らの魔力で塞いだ。そして独立魔力が定着するように一番魔力が集約する心臓に魔力の膜を張ることで、心臓のポンプによって拍子に独立魔力が溢れないように処置を施す。

 おそらく受ける者にとってこれが一番苦しいときだろう。

 魔方陣を身体に刻み込んでいく。熱で焼かれているような痛みが、じりじりと続く。

「ぐっくぅ」
「あと少しだ。がんばれ」
「う、うん」

 そんな苦しそうな声を出しながらもヴェルヌは、痛みを耐え抜いて見せた。アルマ自身も緊張により酷く脂汗を書いていたが、手を付き、項垂れているヴェルヌに、自らの外套を羽織らせる。

「この痛みが引くと同じくらいに魔物の魔力が体に馴染んでいく。それこそ酒みたいに最初は頗る調子が良く感じるかもしれないが、すぐに気持ち悪さや、熱といった症状が表れ始めるはずだ。だから今日はもうベッドに連れていく。いいな」
「うん……。よろしく頼むよ」

 そう言ってアルマは羽織らせた外套の前を留め、ヴェルヌを抱きかかえた。

「わお力持ちじゃないか」

 所謂お姫様抱っこをされたヴェルヌはまんざらでもなさそうなリアクションをしているが、先ほどまで彼女の乳房を見て、触っていた手前、アルマはどうも目を合わせにくい。

「パブロ。居住区は?」
「お疲れさまでした。ご案内します。お疲れさまでしたヴェルヌさん。もし何か欲しいものがあっても何なりと言ってくださいね」
「ありがとう。取り敢えず横になったら、水が一杯飲みたいかな」
「わかりました」

 それを聞いたパブロは部下に口にせずとも、指示を出し、水差しとコップ一つを持ってこさせた。

「こちらです」

 そう言って開けた扉の先には綺麗な真っ白なベッドと机、椅子、本棚などが並ぶ部屋があった。

「いい部屋じゃん」

 嬉しそうに言うヴェルヌの表情は明るく、痛みは引いてきたようだ。

「元気かもしれないが少なくとも三日、長くて五日は安静だからな」
「わかったって」

 部下は、ベッドのサイドテーブルにコップを置き、一杯目を注いだ後にその隣に水差しを置き、部屋を出ていった。よく教育されている部下だとアルマは思う。

「もし不調があったらすぐ言ってくれよ」
「ありがとう」

 そう言ってアルマとパブロはヴェルヌの部屋を後にした。



「さあ私たちもできることから始めましょうか」
「ああ。取り敢えず人体方陣を組み込むのはヴェルヌが技術を完成させてからの方がいいだろうから、俺たちは人員の配置と、そのヴェルヌの言っていた医療ホールの製作に取り掛かるか」
「そうですね。まずは人員配置でしょうか」
「そうだな。部下たちの得意不得意とかはパブロがよくわかってると思うから、そこは任せたい。俺は医療ホールの場所とか位置とかを他の奴らと相談しながら決めてくるから」

 そう言って、作業に取り掛かろうとしたアルマをパブロが引き留める。

「待ってください。貴方が王都からいなくなって早四日ほどです。そろそろ顔を出しておいた方がいいんじゃないでしょうか? いくら休暇でも、不審がる人は少なからずいるでしょう。これからも普段通りに付き合っていくなら、アルマさんが動くのはここらが潮時です」
「それも、そうか……」

 パブロに言われて忘れていたことを思い出したような感覚に陥った。そうだ。自分は、まだ自分が見限った人間種の軍人なのだ。いくらここに居たくても、やらなければならないことがある。少なくとも今やってることは仲間を守るためなのだから。

「わかった。じゃあ後のことはお前たちに任せる。それこそ暗鬼組の力があれば大丈夫だろうが、魔物の力による変異はどうやって現れるかわからない。ヴェルヌのこと頼んだぞ。彼女は俺たちに必要な人だ」
「もちろん。アルマさんもお気をつけて。いつどこから魔人や冒険者の手が伸びるかわからない。それこそ無駄な心配かもしれませんが」
「いやありがとう。じゃあ俺は」
「アーデに送らせましょう。アーデ、アルマさんを王都まで」
「はい。わかりました」
「よろしく頼む」

 そう言ってアルマは黒岩の砦を後にした。

 王都についたアルマはアーデにお礼を言い、自らの部屋に戻ろうとしたところ、アーデに引き留められた。

「パブロ様からの命令で、私は商業都市で待機となっています。もしアルマ様に何かあればすぐに駆け付けろとのことなので、何が御用がありましたらすぐお知らせください」
「あ、ああ。わかったよ。ありがとう」

 なんだか過保護なような気もするが、味方に転移を自由に扱える戦士がいるのは心強い。もちろん戦いにおいてはアルマに到底及ばないアーデだが、人間の中で見れば上位に入る実力であろう。それこそ転移に加え、光によって体を透明化する魔法も扱っていた。戦闘技術だけでなく、魔術にも長けた彼女は、護衛に持って来いと言ったところなのだろう。
 アルマはゆっくりと商業都市に向け、トルム峠を下っていく彼女を見守り、姿が見えなくなった後、王都の|門《ゲート》をくぐり、自らの部屋へと戻ることにした。



「おい、アルマ!」

 そう呼び止められたのは|門《ゲート》を潜ってから少しも経たない時であった。声のした方向へ振り向くとそこには訓練の帰りだろうか。ラフな格好で帯剣しているランスがいた。

「おうランス。どうした?」

 長髪は一纏めにしていても暑いのだろう。額の汗をぬぐいながら、アルマの元へ駆け寄ってくる。

「いや、最近見なかったから。それに、様子。おかしかったろ。あの任務の後から。冒険者が関わってて」

 心配そうにアルマの顔を覗き込む、ランスは良い奴だ。休暇中もアルマのことを心配しながら訓練に打ち込んでいたのだろう。
 アルマは黒岩の砦のことを話すかどうか悩んだ。ランスこそ生粋の王国軍人だ。もし話したとして、それをバロンやリーシュに伝えられたら、それこそ巨大な力を持っているアルマの命は危うい。
 それをわかっているからこそ他言はしないだろうと考えることもできる。悩んでいる時、バンディの顔がふと頭を過った。

 守るためだ。ゆくゆくは|強戦士達《モンスターズ》の仲間たちにも話す時が来る。それは恐らく早ければ早いほどいい。王国軍というものにこだわりが強くなるほど、人間に対する思い入れや意思は強くなっていく。
 だからもう黒岩の砦という拠点があることや、魔特会の後ろ盾があるということは言わずに、ただの思想として、人間種という種族を脱していようとしているということだけを伝える。恐らくこれが最良かもしれない。

「そうだな。色々と思うことがあって。少し話を聞いてもらっていいか?」
「なんだよ。改まって。まあお前が誰かに頼るなんてこと珍しいし、聞くよ。お前の部屋でいいだろ?」
「ああ」

 そしてアルマとランスは、アルマの自室へ足を運んだ。



 そこでアルマはカルチ山岳地帯の任務で出会った魔物のフランや今回の事件で裁かれたライラスのことを交えながら、種族の垣根を超えた種族を作りたいということを話した。しかし全てにおいてそういう考えを持っていて、ランスはどう思うかと意見を聞く体で。

「今から話す話は、王国軍独立遊撃部隊の隊長としてではなく、お前の友人として、俺個人として話させてもらう。まず人間種の現状。こんなこと大きな声では言えないが現人間王、ジョルド王は世間から言われるように愚王であることは間違いないと思う。何より自分のことばかり考えて、国の政治についてはほとんど元老院や将軍に任せっきりだ。少なくとも正規軍の将軍が政治の末端に席を持っているのが俺たち軍人にとっては救いだが、現状発言力が弱いのも事実だ。だからこの前のような盗賊と断定されたものたちに対する依頼がない限り、基本は警備しか行えない。ジョルド王には腹違いの兄がいらっしゃったようだが、十数年前に亡くなられたそうだから、それを惜しむ声もある。何よりもその下手な軍の立ち位置が冒険者の悪行を野放しになっている状況だ。冒険者に恨みがあるアルマからしたら、感情に先走ることもあるだろうが、現状は戦争に備え、下手に動かないっていうのが最善手だと思う」

 数か月会わなかっただけで、これほどまでに考えられるようになったものかと、アルマはランスの成長ぶりに感嘆の声を漏らした。だが反対だった。ここで共感を得られなかったのは後に大きく響くだろう。話さなければよかった。そう思った瞬間だった。

「だが、それをすっ飛ばしても、お前はもっと何かを考えているんじゃないかと思わせる。それこそお前と一緒に過ごした日数は|強戦士達《モンスターズ》のメンバーの中では一番かもしれないが、日数で数えれば数週間か一か月。信用とか信頼とかそんな軽く言える日数ではない。だけど|三首狗の迷宮《ダンジョンケルベロス》での采配や、戦略。魔人使徒との戦闘から全員を生存させて帰還させたこと。何より俺自身の心みたいなものが、お前を信じろって叫んでいる。今は、サリナだって弱っているし、新設の部隊の隊長を任されて手いっぱいだが、いつか落ち着いたら、改めてお前のその話について詳しく議論しよう。安心しろ、今日話したことは誰にも言うつもりはない」
「そうか……」
――ああ、バンディ。俺は本当に良い仲間を持った。本当にお前に会わせてやりたいよ――
「ありがとう。お前が、他の誰でもないお前がそう言ってくれるだけで、とても安心できる」
「気持ち悪いことを言うなよ。それこそ俺の過去は生まれつきだから、受け入れるしかない。だがお前の過去は受け入れるのには多分十年やそこらじゃ足りない。だとしても、そんな過去なかったように、皆に皮肉を言い散らかして、反感を買うのがお前だろ? あの任務から一週間。わからないがそろそろ休暇も終わる時期だと思う。元気出せ。これでもお前は|強戦士達《モンスターズ》の『副』隊長なんだから」

 明らかに副を誇張して言ったランスの顔には不敵な笑みが浮かんでいる。アルマの皮肉を聞き続けた彼なりの優しさなのだろう。だからアルマはこの静かな環境だから驚くように、大きな声で敬礼しながら言った。

「承知しました! 隊長殿!」

 アルマの大声にびくんと驚き身体を震わせたランスは、急に叫んだアルマの腹部に軽く鉄拳を食らわせ「急じゃなくていいんだよ。驚くから」と笑った。

次話


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  • 最終更新:2020-04-16 01:25:07

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