孤独な騎士の呪い

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本編

 本部へ帰る道で、ランスはバロンに尋ねる。

「隊長……」
「どうした? ランス」

 いつもと変わらない声音で話すバロンに対し、強めにランスは問いかける。

「何を企んでいるんですか? いくら俺に勝った奴だとしてもそいつとパーティを組めだなんて」
「お前、何も気づかなかったのか?」
「気づく……? いえ、なにも」
「アルマが急激に強くなったあのタイミングだ」
「すいません、戦いに夢中で」

 バロンは溜め息をつきながら続ける。

「闇の力だ」
「闇……それはあいつの剣の装備魔法の話ではなくてですか?」
「ああ、身体の内側から溢れるように流れ出ていた。本来の素質か、第三者の介入か。少なくとも純人間種であれば、そんなことはあり得ない」
「そうですね……。魔人種の潜入……」
「いや、断言はできないけどな。そう考えてみると団長がなんであの時俺たち三人に普段させないような、街の警備をさせたのか理解できる気がする」
「なんでも見透かしているような人ですもんね」
「ああ、団長はアルマがこの街に来ることを知っていたのかもしれないな」



 深夜、宿でのことであった。アルマの頭に強い衝撃が走った。その衝撃はアルマの頭の中に居座り、脳をかき混ぜるような感覚を、強い痛みとして与える。絶叫。痛みに耐え兼ねてアルマは叫びを挙げた。

「アル!? どうしたの!?」

 サリナはベッドから飛び起き、アルマの元へ駆けつけ、肩を支える。

「あッ。がぁ。グっ。大丈夫っ……だ。すぐ治まるっ……」

 アルマがそう告げたのも理由があった。初めて|大喰手《ビックイーター》を使ったとされるタイミング。あのゴブリンの村で鎌鼬と戦った時だった。この酷い頭痛の後は、何か新しい能力が手に入るとアルマはわかっていた。

 強力な能力の代償と考えればこの程度の痛みも軽いと。

「……やっぱり今回は軽かったな」
「大丈夫? すごい汗だよ……」
「ああ、後でシャワーを浴びてくるよ。それと少し試したいことがあるんだけどいいか?」

 サリナは不思議そうな顔をするが、快く了承してくれる。

「太陽の女神よ……。えっとなんだったかな」
「|太陽の女神よ、貴女の御業を今ここに《ソレイユ・ハルト・パーセル》?」

 太陽の騎士の詠唱文をすらすらと言って見せたサリナに、アルマは驚きを隠せない。

「え、よく覚えてたな。てかあの中で良く聞こえたな」
「いや、バロンさんにあの魔法について少し教えてもらったからね」
「そうか、勉強熱心なこったな。だが助かった。|太陽の女神よ、貴女の御業を今ここに《ソレイユ・ハルト・パーセル》」

 アルマがそう唱えると、ほとんど明かりの無かった部屋を明るく照らす程の光が、アルマの手から放たれるが、それはすぐに消えて行ってしまう。

「あれ……? 詠唱を間違えたかな? |太陽の女神よ、貴女の御業を今ここに《ソレイユ・ハルト・パーセル》!」
「アル! 今何時だと思ってるの? 声大きすぎるよ! しかもそれは太陽の加護を受けていないと発現しないって」

 と、サリナはアルマより大きな声で、注意した。

「いや、まあそうか。悪ぃ。明日にする……」
「私、もう寝るからね、おやすみ」
「あ、ああ。おやすみ」

 魔法は確かに発現しかけた。だから少なくともこの魔法が使えるようになっているのは確かだとアルマは確信していた。

 未だ研究を進めたいアルマであったが、夜も遅かったため、もう一度シャワーに入り、明日続行することにした。



「なぁー! もう! なんで上手くいかねえんだ!?」

 朝起きてから宿の部屋でずっと太陽の騎士の研究をしていたアルマはそう叫んだ。サリナは街の観光へ行っている。|迷宮《ダンジョン》への出発は明日の朝で、今日は自由行動だ。そのためアルマは朝から太陽の騎士の研究を行っている、のだが上手くいかない。

 ふと、昨日の夜サリナがバロンに太陽の騎士について色々教えてもらったと言っていたことを思い出し、バロンの元へ向かうことにする。

「なんの用だ?」

 本部に入ろうとすると、門番のような兵士に止められる。その兵士の手は腰に帯びている剣にかけられている。

「バロンに用があるんだけど?」
「アポイントは取っているか?」
「いや」
「それでは通すことはできない」
「じゃあ、お宅の騎士殿、ランス公をボコボコにしたアルマ=レイヴンが来たって伝えてくれよ。そしたらあんたのその悪い態度も多少は変わるかもしれない」

 アルマがそう言うと、その兵士は驚いたような表情をした後、恐る恐る応える。

「な、なにっ。身分証明としてアイデンを」

 アルマは何も言わず、アイデンを差し出す。

「そ、そうか。君はアポイント無しに通していいと、上から言われている。通行を許可する」
「そうなんだ、さんきゅー」

 アルマはアイデンを受け取り、本部へ入る。聖騎士を一人倒しただけでこの好待遇。強いということのメリットを強く感じたアルマであった。

 少しするとバロンが急いだ様子でアルマの元へ走ってきた。

「おう! 坊主、どうした?」
「昨日ランスが使ってた太陽の騎士について聞きに来たんだけど、時間ある?」

 バロンは受付に走って行き、何かカードのようなものと紙とペンを持ってきた。

「えっと、聖教騎士の心得に太陽の女神の聖書、使徒の教え。よし、これを持って二階にある蔵書室に行ってこい。それでこの資料を読めば大抵のことは全部乗っているはずだ」
「え!? あ、おい!」
「悪ぃ。今ちょっと忙しいんでな。自分で何とかしてくれ」
「あ、え? あ、ちょっと!」

 行ってしまった。

 渡してきたのは読むべき本のタイトルと、蔵書室に入るための許可証であった。

 アルマはバロンの指示通り、蔵書室へと向かった。そして太陽の騎士の魔法について調べる過程で、少し聖教騎士、太陽の使徒について調べてみることにした。



 太陽の使徒、これは全能神の加護を受けることで授かる光の勇者のようにしっかりとした条件はなく、所謂神の気まぐれで加護を得ることができるらしい。

 加護を得る年齢もバラバラで平均寿命八十年の人間族で最年少は二歳、最年長は九十歳まで色々。

 そしてその太陽の加護を受けると、光の勇者同様様々な恩恵が得られる。
 その一番が神から授かる魔法、強力な神授魔法を獲得できるということ。太陽の神授魔法最大、最強の魔法があの太陽の騎士だ。

 太陽の騎士は簡単に言えば、血の魔法であり、身体能力を爆発的に上昇させる限界突破とほぼ同じ魔法であった。しかし太陽の騎士はそれだけではない。身体の強化だけではなく、自分に合った武器が魔力で生成される。

 恐らくランスの場合は剣と盾であったのだろう。

 書物を読んでいる過程で、ものすごい魔法を相手にしていたということに驚いたうえで、使えない理由も見えてきた。そう、アルマには太陽の加護がない。

 しかし太陽の加護が無いにしても、太陽の騎士が発現しかけたのも事実だ。それにそんなことを言ってしまえば、鎌鼬ではないアルマに鎌鼬の固有魔法が扱えるのはおかしい。その理論から考えれば使えるはずなのだ。

 やはり、どこかイメージに対しておかしいところがあるのだろう。

 だが、バロンに伝えられたいくつかの本を読んでも、そのイメージが固まることはなかった。

 諦めかけ読み終わった書物を片付けていた時、何の因果か本の隙間から本とは言えないようなボロボロの冊子が足元に落ちた。

「なんだ、これ……」

 その冊子には『太陽伝』と題が付けられており、中身は最初に太陽の加護を受けた英雄の話であった。だが内容はよく見る光の勇者のお伽噺とは違い、勧善懲悪の物語ではなく、少し寂しい物語であった。



 ある村に一人の青年がいた。
 力のない青年は弱い魔物を倒すことでなんとか生計を立てている。その健気で儚い青年を見た太陽の女神様は、その姿に惚れ込み、加護を与えた。

 加護を得た青年は強大な力を、強大な悪をも退ける力を手に入れた。
 青年はいつしか、英雄と謳われるまでに成長することとなる。

 しかし青年は力に溺れず、初心を忘れず、皆に優しく小さく生きていく。
 青年は順調に力をつけ、魔人種にも対抗しうる戦士まで成長していた。
 そして青年は長きの戦いに終止符を打つべく、魔人種との戦争に身を投じる。これこそあの狼人族が合成獣を打ち倒した血の大戦だったのだ。

 青年の所属した軍にはあの光の勇者として全能神の加護を受けることになる者も所属した。
 
 青年は魔王の下僕の使徒と戦うが、やはり人間の力では魔人には敵わない。
 それを見た太陽の女神は青年に自らの魔力を分け与えた。

 大いなる太陽の女神よ。我、主の力の元、悪しき魔を滅ぼさん。太陽よ、闇を掻き消す聖なる光よ。我に黄金なる紅き力を与えたまえ。

 青年は大きく強く叫んだ。
 するとその手には黄金に光り輝く剣が握られていた。
 それこそあの女神の神器、太陽剣レーヴァテイン。

 青年はボロボロの身体で立ち上がり、最後の力を振り絞り、使徒に致命的な一撃を与えることに成功するが、その攻撃ですら、使徒を倒すには至らず、青年はそこで力尽きてしまう。

 その後、青年を失った太陽の女神は、その悲しみから本来の力を与えることはなくなり、未だ青年の後継者は現れていないと言われている。



「もしこの話が本当なら……」

 なぜこの本が本棚の奥でボロボロになっていたのかも頷ける。
 太陽の女神が本当の力を与えていないとしたら、太陽の騎士たちの士気は下がるかもしれない。偽物の力を与えられた者たちなのだから。

 そして「やはり人間の力では魔人には敵わない」という一節。人間は魔人に敵わない。こんなお伽噺が広まってしまえば、このご時世どこから文句が出るかわからない。

 と、思いつつもアルマが一番気になったのはやはり真の太陽の騎士の使った魔法であった。

「本当の力、女神の魔力……。|太陽の紅騎士《ソルガーディアン》」

 詠唱文をメモした後、アルマは走り、宿へと戻っていく。



「|大いなる太陽の女神よ。我、主の力の元、悪しき魔を滅ぼさん。太陽よ、闇を掻き消す聖なる光よ。我に黄金なる紅き力を与えたまえ《ソレイユ・グラン・レーヴァティン》」

 そう唱えた瞬間、豪風が巻き起こる。膨大な魔力の流れが生み出す空気の流れが、強大な風となり、ベッドのシーツやカーテンを酷く暴れさせる。

 黄金に輝く右腕は溢れ出る魔力を留まらせ、その魔力を剣の形へと変化させていく。

 ランスの持っていた黄金の剣とは全くと言っていい程、形は違い、橙の光が燃え盛る火炎の如く吹き荒れる剣、これこそレーヴァテインだった。

 力も同様にかなり強化されているようだが、独立魔力開放と比べてしまうとそれほどではない。しかし|大喰手《ビックイーター》、人体方陣という禁忌がバレるリスクを考えるとこちらの方がいいのかもしれない。

 アルマは明日のことを考え、魔力回復薬を買いに街へと繰り出す。



「えっと、国民記録を。どこだったかな。そうだパレルだ。名前はアルマ=レイヴン」

 ランスは国民記録を受け取り、自分のデスクに座り、その書類を開く。明らかに他の人間より薄い記録になっていた。

「十一歳より以前の記録はなしって……。イレギュラーにもほどがある。十一歳から傭兵都市で傭兵稼業。俺より実践歴は上か。しかも四人という少数パーティで人間種初の|魔物部屋《モンスターハウス》攻略……」

 ランスは薄っすらと頭痛がし始めた気がする。

「そのときのパーティは解散。その後また十五歳までの記録はなし。そして今更魔法学園に入学、そして今に至るか……」

 まず幼少期が不明なところは疑わしいが、この世の中を見渡してみれば孤児は珍しいものでもなかった。でもただの孤児がまともに大人と競い合い、傭兵を行うなんてことは可能だろうか。

 しかも|魔物部屋《モンスターハウス》攻略組のパーティリーダーなんて怪し過ぎる。

 ランスはそんなことを考えながら、書類の文字を見つめる。

――それからの三年も、怪しいと言われれば怪しい。どうだろうか、闇魔法か……。

 ランスはバロンを信用していないわけではなかったが、どうにもアルマが闇魔法を使う種族――人間種の敵対種族、魔人種――とは思えなかった。

 それこそアルマを信用するわけではないが、ランスは、アルマは魔人とも、寧ろ人間ともどこか違う雰囲気を感じていた。それをどういうことか自分でも理解できていないのだが。

 どこか異国的というか、違う世界の住人のような。

――ではなぜ、人間のあいつから闇の力が。半人半魔……。

 ランスはその言葉を頭の中で繰り返すが、少しすると頭を振り、考えを改めた。

――そんな稀有な存在がこの世に何人もいてたまるものか。

 獣人と人間の混血と言うのは血の大戦と呼ばれる、光の勇者が現れた魔人種との大型戦争より前の時代には多かった。それも今はそこまで多くない。

 獣人は血の大戦で、魔人種の側についた。そのため今獣人の混血はとても数が少なくなっている。昔血が混ざっており、今の時代隔世遺伝として獣の耳を持つ者が産まれたりするのだが、そういう者は皆、人間種の世界では差別の対象となっていた。

 獣人ですらそういう扱いであるのに、遥か昔から敵対種族であった魔人との混血となれば、街を歩いているだけで石を投げられる。

――まさか、だから幼少期の記録がないのだろうか。

 家族で山や森で暮らしており、父親が一人で家族を養っていけるような実力者であれば、あの戦闘技術は納得できる。

「いや、本人に聞くのが一番か」

 ランスは静かに書類を閉じた。



「おい、アルマ。いるか?」

 部屋の扉をランスが叩く。その声でランスだと気付いたアルマは扉を開ける。

「おお! これはこれは騎士様、一端の旅人なんかに、如何な御用でございましょうか?」

 そのアルマの言葉を聞いたランスは不機嫌そうに口を開く。

「君は口を開けば、皮肉が出てくるな。ただ昨日の試合、君がどうしてあんなに強くなったのかを知りたくてね」
「ふーん。まあ急に強くなったのはお前も同じだろう? しかもなんでまた、わざわざ自分のことをボコボコにした人間の元にのこのこと? 大好きバロン隊長に俺を探って来いとでも言われたか?」

 ランスは頭の中身を読んでいるのか、というリアクションをしてしまう。

「図星か。俺が魔人と繋がっているとでも? そう考えられているなら今すぐサリナを連れて帰らなければならないなあ。なぜならここは敵軍の最前線だ」
「なっ。待て待て!」
「馬鹿が。焦りすぎだ。冗談に決まっているだろ? 少なくとも聖騎士が俺にマークを付けるのは妥当だ。それを踏まえて何を知りたい?」

 アルマは武器の手入れをしながらランスに問う。

「今は何をやっているんだ?」
「はぁ? そんなことか。お前が昨日ぶっ千切ったワイヤーを直してるんだよ」

 ランスは申し訳なさそうな顔で続ける。

「それは済まないことをした。治りそうなのか?」
「まあ、昨日程の強靭さは持たないけど、大丈夫だろ」
「それなら、よかった」
「そんなことを聞くためにここに来たんじゃないだろう? サリナも目当ての内か? あいつは当分帰ってこねえぞ?」
「いや! そんな! そうではない!」
「馬鹿が。焦りすぎだ」



「大体のことは調べさせてもらったんだが、どうにも君には不明な点が多いようだ。というか経歴として白紙の部分が多すぎる。それに昨日の能力も。明らかにあれは魔法の類ではないだろう?」
「|特殊能力《スキル》の詮索はマナー違反だろう? しかも俺を魔人と通じていると考えている奴等は信用ができないからな」
「それでは君の疑いは晴れないぞ?」
「まあ、それならそれでも問題はないかな。魔人の方が上手い飯食わせてくれるならな? と言っても、事実ここでそんな発言がメリットにならないこともわかっている。全部を見せるわけではないが、面白いものなら見せてやるよ」

 アルマは編み終わったワイヤーを机の上に置き、腰に付けていた機械でそれを巻き取る。その装備を外した後、ゆっくり立ち上がり、詠唱する。

「大いなる太陽の女神よ。我、主の力の元、悪しき魔を滅ぼさん。太陽よ、闇を掻き消す聖なる光よ。我に黄金なる紅き力を与えたまえ」

 レーヴァテインを見たランスは驚き、その目を丸くする。少しの静寂の後、ランスは弾かれた様にアルマに詰め寄った。

「太陽の魔法を何故貴様が!」

 その声は重く荒々しい。

「落ち着けよ。言ったろ? 俺の|特殊能力《スキル》を見せるって。明日から共に行動するやつが、俺が攻撃するごとに大きなリアクションされてちゃあ、たまらねえからな」
「これが君の|特殊技能《スキル》の一端ということか」
「急に強くなったのも、このお陰。俺が魔人と通じているかもって思われたのも多分この能力のせいだろうな。まあこれをお偉いさんに全部ぶちまけるかどうかはお前次第だ。だがそういうようなところはある程度見込んだうえで、パーティに引き入れたつもりだ」

 俯き、ランスは何かを考えているようだった。

「そうか。心強い者にスカウトされたようだな、俺は」
「ふん、用が済んだのならさっさと帰れ。明日にちゃんと備えろ」
「ああ。ああ、わかった」



 帰り道、ランスは途方に暮れていた。

 アルマは自らを複製し太陽の魔法、それも自分のよりも強力なものを発現させて見せた。。その事実的証拠から考えてランスは、アルマの能力は、複製した魔法を強化して放つ|特殊能力《スキル》ではないかと予想していた。

 敵わないのも当然だ。そう思えてしまう程、自分が喧嘩を売った旅人は途方もなかった。

 ランスは右手を閉じたり開いたりした後、魔法を発現しようとする。

「くそっ!」

 普段なら発現するはずの魔法が、発現しない。その苛立ちを通りの建物の壁に思い切り、拳と共に叩きつける。

 急激に強くなったアルマに、黄金の盾ごと右腕を砕かれた時、異様な右腕の脱力感と共に、違和感を覚えた。それはすぐに形となって表れた。魔力が右腕に供給されていない。

 正確に言えば、魔力供給されていないわけではない。魔力が、魔法を発現できない程に、不安定にしか供給されていなかった。

 ランスは盾を持つ開いた右腕で、魔力を操作していたのだが、それが今できない現状にある。

ランスは傷が癒えない右腕を見て呟いた。

「あいつは、俺の呪いすらも掻き消すというのか……」

 今まで心に背負ってきていた大きな傷。それを齎した呪いが機能していない。ランスにとってそれは大きな衝撃であり、微かな希望すらも感じてしまう自分が憎かった。

「明日は盾を使わずに行くしかないな……」

 自分の弱さに、そして立ちはだかった強大な壁に、ランスは複雑な感情を抱き、それを怒りとしてしか吐き出す方法を知らなかった。

次話


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  • 最終更新:2020-04-16 01:10:07

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