森の墓場

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前話


本編

 タチャラの森に目的が決まったとしても、一人でそこに行くわけにはいかないだろう。まず王国軍の任務がある。何か王国軍への依頼を探してみてもいいかもしれないが、タチャラの森は人間種領ではない。
 正確に言えば、どの種族の土地でもない。本当に誰にも手が付けられていない未開の地、それがタチャラの森だ。
 そんなところに問題があったとしても、誰も気に留めないだろう。

「どうするか……」

 そう悩みながらも、その日に答えが出ることもなく、夜は更けていった。



 眠るにも、眠ることが出来ず、ベッドに寝転がりながら、窓の外の空を見ていた時、耳が異様に痙攣し始め、アルマは身体を起こした。
 近くに大きな魔力が近づいてきていることを察知したのだろう。しかしそれは敵襲とかではなく、仲間たちの帰還であると、魔力の質からわかる。

 アルマは部屋着のまま、扉を開け、王都の|門《ゲート》へと歩いていった。

 王国軍選抜試験から半年近く。既に冬は終わり、春を迎えた夜は少し肌寒いながらも、薄着でも過ごせる位には温かくなってきていた。

「やっと、着いた……」

 血まみれでボロボロの仲間たちを見たアルマは、その姿に驚き、鎌鼬の身体強化で駆けつける。

「おい、どうした!」

 まともに歩けているのは、日中外に出たのであろう光剛生によって無傷なランスと、サリナだけであった。
 ロードは魔力の枯渇か、ふらふらとランスの肩を借りながら歩き、ランスは気絶しているであろうガルムラスを抱えている。
 サリナは頭に乾いた血が付いたセラを抱きかかえていた。

 アルマはサリナからセラを受け取り、尋ねる。

「敵が、最初にセラを」
「なんで前衛がしっかり守らなかった!?」

 表情に影を通すランスとロードを見る限り、張り合ったのだろう。

「くだらねえことで足掬われやがって」

 アルマが部屋を出たことに気付いたのか、エルノが遅れてやってきて、その状況に慌てて、ランスからガルムラスを受け取る。

「傷だらけじゃないか!」
「エルノは|回復術《ヒール》は?」
「応急処置程度なら」
「じゃあセラを」

 アルマはセラを地面に寝かせ、ガルムラスを受け取る。しかしここで処置をしても仕方ないと思い、王都のバロンの部屋がある方向へ向けて、手をかざし、闇の魔力の波動を最小出力で放った。

「今何を?」
「バロンを起こした。すぐ来るはずだ」

 ランス、ロード、サリナはほぼ同時にどさっと崩れ去る様に座り込み、項垂れる。

「これからこいつらに一週間サバイバルさせるのか」

 すると、リリアーノが慌てたように走ってきて、エルノに変わってセラを治療し始める。

「なんで気付いた?」
「エルノのテレパスで」
「そうか、助かる。そろそろバロンが来るはずだから」
「大丈夫、見た限り命に別状はなさそう」

 アルマとエルノはそっと胸をなでおろした。少しすればバロンが走ってきて、「何があった!?」と驚きながら、現れる。バロンが着いたのとほぼ同時に、ナディアも騒ぎを聞きつけたようだった。

「すまん、手荒な起こし方をした。|迷宮《ダンジョン》踏破に失敗したみたいで皆ボロボロだから、医療施設に運ぶのを手伝ってほしくて」
「お前か、あんな起こし方……」

 とバロンは、ほっと息を漏らしたが、すぐに表情を変えた。

「医療施設には運ばない」
「なっ?」
「遅かった班は、一週間サバイバル訓練だ。言っていただろう。少なくとも医療施設に入れるのは一週間後だ」
「見えないのか? 皆疲労困憊で怪我人も出てる。ガルムに至っては腕だって折れてる!」
「そうした状態で、生き残る。戦地ではそういった治療がうまくいかない状態で生き延びなければならない時だってある。今回はそれを見越した訓練だ」
「訓練!? それはどうしようもないときだろう! 今治療できる場所が目の前にあるのに、おかしいだろ!」

 バロンの目は冷たい。

「上官に楯突くのか?」

 時が止まった。そう錯覚するほどに、皆が息をのむ。ランスがふらふらと立ち上がり、アルマの肩に触れた。

「アルマ、良い。俺たちがペナルティを受けるのは当然だ」

 そう言ったランスはバロンに礼をして、班の者たちを連れて歩き始めようとするが、その手をアルマが取り、引き留める。

「いや、行かなくていい」
「おい、お前何を言っているのかわかってるのか? もう学生気分なのもいい加減にしろよ? お前はもう軍人なんだぞ?」

 バロンは重く静かに怒りを燃やしながら言った。

「わかってる。だから俺が代わりにペナルティを受ける。動けない五人分。五週間。王都には帰ってこない」
「訓練はどうする?」
「その時は訓練場に戻って来るさ。寝床も、飯も支給は受けない」
「そうか、それならそうしたらいい。じゃあここに居る奴らは責任を持って俺が医療施設に連れていく」
「ああ、よろしく頼む」

 と部屋着のまま|門《ゲート》へ向かうアルマを引き留めたのはナディアだった。

「私も行く。二人で二週間半。良いですか? 指揮官」

 バロンはナディアの言葉に驚きを隠せないと言った様子だ。それもそうだろう。恐らくこの|迷宮《ダンジョン》踏破の前の彼女であれば、こんなこと言うはずもなかった。

「……好きにしろ」
「ありがとうございます……。アルマ君、待って」

 とてとてとアルマを追ったナディアはアルマに「装備くらいは取って来いよ」と言われ、自らが寝間着であることに気付き、恥ずかしくなったようだ。

「ちょ、ちょっと待ってて」
「ああ」

 エルノとリリアーノは立ち上がり、バロンの前に立った。

「僕も行ってきます」
「私も行くけど、一つ質問良いですか?」
「なんだ?」
「アルマとナディアが言って二週間半って言ってるけど七日×五人分なら三十五日ですよね? それを二人で割ったんだから十七日と半日。じゃあ四人なら八日と四分の三日? それとも九日? そこをはっきりしてもらいたくて」

 アルマの独断に呆れながら、その苛立ちをバロンにぶつけているのだろう。物怖じしないリリアーノの態度にバロンはたじたじで「八日でいい」と言ってしまう。

 先に帰ってきた班にペナルティを押し付ける形になってしまったランス達は、困り、「俺も行く」、「私も」とランスとサリナは立ち上がった。

「好きにしろ」

 とセラとガルムを抱え歩き始めようとするバロンの前に今一度リリアーノは立ち、「さっきの話で行けば五日ですよね?」と笑いながら尋ねた。

「ああ、そうだ」

 リリアーノはバロンに見えないように、仲間に向かって笑う。三十五日を六人で。六日と言われてもおかしくないが、今回はリリアーノの勝ちみたいだった。
 それからランスの額に向かってぐりぐりと人差し指を押し付け、「商業都市、高級、レストラン」とリズムに合わせて言った。

「わかった、わかった。感謝してるよ」

 とランスは笑う。

 すくりと立ち上がり、部屋へ戻っていくロードの背中を他の仲間がどのように思ったかはわからない。少なくともリリアーノはどこかで誰かに、ロードの文句を言うだろう。
 アルマは、わからなかった。というよりどうでもよかった。



 そして五日。長いようであっという間な五日間は、また彼らの絆を深めたはずだ。もちろんペナルティを肩代わりしてもらった者たちは罪悪感を覚えているかもしれないが、それもある種の絆として残っていくだろう。

 ほぼ傷が完治したイギル、セラ、ガルムラスはペナルティから帰ってきた皆を|門《ゲート》で出迎える。

「お帰り……」

 セラは表情に影を落としながら言うが、サリナやナディアは走ってセラの元に駆け寄り、セラの完治を喜んだ。

 ガルムとランスは固く拳をぶつけ合い、アルマ、エルノ、リリアーノはイギルの元へ。

「すげえだろ、魔力解放の負担はよぉ」

 と笑いながらアルマは尋ねる。

「ああ。今でもどこか違和感があるくらいだよ。あんなのを使って皆を守ってたんだな」

 暗い表情になるイギルの肩にアルマは拳をぶつける。

「辛気臭い顔するな。今回はお前も活躍したんだ」
「そうだよ、イギル。君とアルマが|神喰狼《フェンリル》を倒してくれたから僕たちはここに居ると言っても過言じゃない」
「まあ男一人抱えて帰る大変さを知ってほしいものだけどね?」
「お前は担いで帰ってないだろうに……」
「はぁ? そのおかげでイギルとあんたの荷物を持つ羽目になってるじゃない!」

 人差し指を立て、ぐいぐいとアルマに迫るリリアーノは、先ほどまで仲間のためにペナルティを肩代わりしていたとは思えない。

「助かったよ。本当に」
「ふん、ペースが崩れるわね!」

 リリアーノはそう言って、訓練場へと歩いていく。アルマたちが帰ってきたら新たな任務を言い渡すと、呼び出されていたのだ。
 サバイバル訓練は、協力もありでアルマがいた手前、訓練というよりキャンプの様な非日常を過ごした彼らの心身は寧ろリフレッシュされている。

 リリアーノを追う様にアルマたちは訓練場へと向かった。

 その道中、自主訓練の後であろうロードが彼らの横につき歩き始める。その態度にムカついたアルマはロードに「そんな根性なしだとは思わなかったよ」と吐き捨てる。
 ロードは自覚していたようで、下唇を噛み締め、何も言おうとはしない。

「張り合いもねえな」

 アルマはそう言って、皆より速足で訓練場へ向かった。



「戻ってきたかお前ら」

 そこには上官ではないいつものバロンがいた。

 ランスを一人、その後ろに五人ずつ二列の計三列で並びバロンの指示を仰ぐ。しかしバロンは何か言うわけでもなく、顎に手を当てて悩んだ。

「本来これが終わったら来ているはずの依頼を行ってもらうつもりだったんだが、お前らにあった依頼が届いていなくてな。また同じことをやってもいいんだが、どうだ?」

 アルマが一歩前に出て、言った。

「それならタチャラの森に遠征を」
「タチャラ? そうか。でもお前らの実力では厳しくないか? 魔物が強いのもそうだが、何よりキャンプで凌がなきゃならない。|迷宮《ダンジョン》一個攻略できない者が半分いる状態でそれは」
「いや、タチャラには魔特会の本部がある。この前の依頼で、魔特会の長とは知り合いになったからそこを拠点にしようと思って」
「そうか。それならやれなくもないが、他の|迷宮《ダンジョン》じゃなくてタチャラの森を選んだ理由は?」

 アルマは少し考えた後に話し始める。

「自分の魔力解放が思いもよらないところにリスクが現れていることに気付いたから、なるべく多種多様な魔物の力が欲しい。それに今回の遠征で大きな成長を見せた者がいるから、ああいった形の遠征は何かしらで続けていくべきだと思う。あと|迷宮《ダンジョン》っていう踏み均された土地ではない場所で訓練を積みたい」

 大きく成長を見せた者の発現でバロンはナディアを見つめる。

 本当の目的は|合成獣《キメラ》と狼人族の英雄について調べるためだ。しかし夢の中で|合成獣《キメラ》に会ったなんて言ったら、皆が本来心配している「独り言」についてどのような処置を成されるかわからない。

 でもタチャラの森には行きたい。それなら訓練という名目で行ってしまえばいい。

 バロンはどう判断を下すのか、アルマは静かに表情を伺う。

「そうか、良いんじゃないか? でも何か成果として提出できるものを持ってこなきゃだめだ」
「それなら簡単だ。同じように班分けをして魔晶石の換金した額の多さを競えばいい」
「そうだな。それならそうしよう。タチャラの森に遠征とするなら二日休暇にした後、行ってもらうとしよう」



 決まった。これで気兼ねなくタチャラの森に行くことが出来る。

 そこでアルマはまず商業都市へ向かい、そこにいるアーデと合流。そして黒岩の砦へと向かって、パブロに本部の一部分を貸してもらえないかと尋ねた。

「もちろんお仲間であれば問題はありませんし、既にあなたは狼の牙の首領です。そんなこといちいち聞きに来なくても大丈夫ですよ」
「まあ突然行っても部下たちが困るだろうからと思ったんだけどな。いいなら向かわせてもらう」
「是非。ところで何か目的が?」
「ああ、表向きには|強戦士達《モンスターズ》の訓練なんだが、本当は」

 と言って、アルマは少し悩む。

「どうしました?」
「いや、なんて言ったらいいのか。夢を見た」
「夢、ですか」
「ああ。狼人族の英雄と、|合成獣《キメラ》がな」

 アルマは昨晩の会合について、自らが感じたことを含めて詳細にパブロに話した。狼の牙の首領はアルマかもしれないが、事実上の首領はパブロと言っても過言ではない。彼はそれほどまでに良く働いてくれる。
 だから彼はしっかりと知る権利があるだろう。

「そうですか。彼らの墓場について彼ら自身から聞きましたか。それでは本部の方には私も同行しましょう。特異点は過ぎたようだ」
「特異点?」
「はい。詳しくは現地で話します。眠らなくて良いと聞きましたので、お仲間が熟睡しておられるであろう深夜にでも」
「わかった。出発は二日後だ。タチャラにつくのは五日以上先になると思うからそれだけ覚えておいてくれ」
「わかりました。それでは是非お気を付けて」
「ありがとう」

 アルマはみるみるうちに変化していく友との思い出の地を見回して、パブロに礼を述べた。

「これからもよろしく頼む」
「はい」



 特異点。それが何を表しているのかはわからない。パブロがもっと何かを知っているのは確かだ。

 アルマはここでだけ外すことの出来る腕のカバーを取り、あの木の元に座った。

 ガルベスとの戦いの最中、身体を吹き飛ばされここに衝突したのを思い出す。その傷は既に消え始めているが、未だに薄らと刻み込まれている。

 埃が被り、他の植物の蔓が生え始めた|棘戦鎚《スパイクメイス》の柄に優しく触れ、空を見つめる。

「ここも変わっていくなぁ」

 そう呟いた瞬間、木が風で揺れる。あいつがこんなロマンチックなことをするはずないとわかっていながらアルマはその風が、あいつの返事の様に感じ、一人静かに笑った。



「暑いなぁ」

 そう呟いたのはいつもと違いオールバックで髪を括っているランスだった。

「そうだね。同じ大陸だとは思えない気候の変化だね」

 続くのはエルノだ。
 日差しはそこまで強くない。しかし春先は既に過ぎ、初夏へと移り変わりつつあるこの魔法大陸で、タチャラの森は特に霧が立ち込めるほどの湿度とその湿気が故の暑さも脅威の一つとして謳われている場所であった。

「キャンプじゃなくて宿を貸してもらえるのはありがたいわね」

 リリアーノは手をぱたぱたと動かし、顔に風を送りながら言った。

「リリィぃ。氷出してくれぇ」

 イギルがリリアーノに頼むが、その要望に気前よく答えるリリアーノではない。

「私が氷を出したらあんたは何をしてくれるわけ?」
「涼しくなったらタチャラの森までおぶってやってもいいさ!」
「はぁ!? 何馬鹿なこと言ってんの? こんな暑苦しいのにわざわざあんたに密着するような選択するわけないでしょ!? そのちっさい脳みそもっと良く使って考えなさい!」

 リリアーノの猛攻にしゅんとしたイギルは、皆より重い得物である大地斧を背負いなおし、歩き始める。
 そんなイギルより重い得物を持つガルムラスはいつも通り寡黙に、その歩を進めている。しかしその面持ちはいつもと違い、少し気合いというか、思いつめたような気迫を感じられる。

 それもそうだろう。前回の|迷宮《ダンジョン》踏破の任務で、ガルムラスの所属していたランス班は失敗の上に怪我人を多く出した。しかもそのうちの一人が最優先で守るべきである|治癒術士《ヒーラー》のセラという失態だ。

 気合いを入れてもらわなければ困る。しかし肩の力を入れ過ぎても失敗するだろう。

「肩の力を抜けよ」

 アルマの言葉にガルムラスはゆっくりと振り返った。

「別に入っていないが」
「見え見えだぞ。今回こそは確実に|治癒術士《ヒーラー》は守ってやるってな。前回リリアーノと組んだが、特化|治癒術士《ヒーラー》じゃないリリアーノは守る意識がなくてもそこまで危機的状況に陥らなかったんだろ?」

 ガルムラス、リリアーノ、エルノは魔法学園都市部でパーティを組んでいたメンバーだった。だからセラという攻撃をほとんど行うことをしない|治癒術士《ヒーラー》と組んだことで今までの|殴られ屋《タンク》としての立ち回りが大きく変わった。アルマはそれがガルムラスの失敗の要因だと考えている。

「そうか。だが|治癒術士《ヒーラー》を守れない|殴られ屋《タンク》は失格だ」
「誰か死んだか? 次を見ろ。堅物はキャラだけにしとけ」

 アルマはそれ以上の返事を求めず、隊列の自らの位置へと戻っていった。

「何話してたの?」
「いや、別に大したことじゃねえよ」

 サリナは「ふーん」と納得していないながらも、深入りしない。
 するとアルマの手を突然取り、普段つけていた手袋とカバーを外した。

「本当にサイレンスの腕みたいになっちゃったね」

 と、アルマの指と指の間に自分の手を突っ込んでみたり、毛並みを確かめてみたり、爪の先を恐る恐る触ってみたりと、自分の好奇心が赴くがままに、アルマの腕を観察する。

「馬鹿が見せもんじゃねえぞ」

 人の腕で拳骨を食らったサリナは「いてっ」と笑いながら、アルマに手袋を返した。

「ランスたいちょー。アルマ副隊長が不当な暴力を振るいますー」
「サリナが悪いことしたんだろ?」

 笑いながら言うランスの元へサリナは走っていく。

「一応軍隊だぞ、俺ら」



「し、自然すぎる……。ああやったら私もアルマ君と手繋げるかな?」
「い、いやぁ、セラちゃんはキャラじゃない……」
「え?」

 普段自分の後ろに隠れているナディアが自分に突っ込みを入れたことに驚き、セラは目を丸くしてナディアを見つめた。

「キャラじゃないよセラちゃんは。サリナちゃんみたいなわんぱく系は」
「そ、そうかな」
「セラちゃんはもっと自分の武器をわかった方がいい」

 突っ込みどころかアドバイスを頂いてしまったセラは、その歩行を止め、歩き続けるナディアの後姿を見つめ続ける。

「なにしてんの? いくよ」

 と、手を差し伸べるナディアの元に駆け寄り、セラは笑った。

 ロードは一人、静かに歩みを続ける。



 片道三日。キャンプを繰り返しながら辿り着いたタチャラの森は、先日と変わらず鬱蒼とその青を茂らせており、おどろおどろしい雰囲気を醸し出している。

「いらっしゃいましたね」

 |強戦士達《モンスターズ》にそう声をかけたのは、パブロであった。

「アルマさんから聞いていましたので、準備は整っております。探索は明日からなんでしょう?」
「ああそうだ」

 アルマが答える。

「でしたら今日一日はごゆるりとお過ごしください」

 そう言って男性陣はパブロに、女性陣はアーデに連れられて部屋へと案内された。

 アルマはランスと同じ部屋であった。

「いつの間に魔特会の長と仲良くなってたんだよ」
「知り合ったのはあの事件からだよ」
「そうなのか。その割に手厚い歓迎だな」
「まあな。俺の傭兵時代から知っていたらしくてな。俺の《《事情》》を良く知っていたんだよ。気持ち悪いだろ?」

 ランスは笑っている。

「まあ、有名だったのもあるけど、それで話しやすくてな。魔物の研究が主だし、話もあうから」
「そうか。でも今日は良かったよな。あんな暑いところでキャンプなんてしたら一日も持つかわからないぞ」
「それもそうだ。俺はこれからのことをパブロと話してくるから、適当に暇を潰しててくれ」
「わかった」



 アルマはホールの机にて、アーデと共に酒を飲んでいるパブロを見つけ、彼らの元へ歩いていった。外には既に夜の帳が落ち、月が遠くで輝いている。

「これはこれは」

 と立ち上がろうとするパブロを制止し、椅子に座らせる。

「俺もいいか?」
「是非」

 脇に置いてあった金属のゴブレットに、ワインを注ぎ、アルマの前へ差し出した。
 一口飲んだアルマは、鼻腔に抜けるブドウの香りを逃がさないように、息を吸い、口からふぅと空気を吐き出した。

「うまい」
「その年で飲み方も一人前だ。誰かに美味しい飲み方でも?」
「なんだろうな。記憶がないからもしかしたら近親者がそういう飲み方をしていたのかもしれない。それか|合成獣《キメラ》や狼人族の英雄……シルバが」
「そうですか……。まあまだ夜は長い。墓場までの道も整備され、警備も行き届いているので、少し酔っ払っていってもいいかもしれませんね」

 パブロはその優しい顔で静かに笑った。休んでいたためか髪型をオールバックから崩し、下ろされている灰色の髪が薄らと揺れた。
 アーデも静かにゴブレットを口にする。



 三人が笑いながら話している時に現れたのはセラだった。

「あ、あのアルマ君……」

 呼ばれたことでセラがいることに気付いた彼らは一斉にセラの方を向く。長い金髪に、風呂から上がったばかりなのか紅潮した頬、可愛らしい顔がはっきりとそのアルマたちのだらけていた空気を引き締めるのを感じた。

「セラも飲むか?」

 アルマは水差しに入れられたワインを見せ、セラに言う。少し頭がぼーっとしているようだ。普段より緩い表情をしているだろう。

 そんな表情を見て笑うセラは可愛い。いつもは意識していなかったが、こう見てみると本当によくできた顔だと見惚れてしまう。

「いや私はまだ飲めなくて」
「そうか、じゃあ座るだけ座れよ」

 と、隣の椅子を引き、ぽんぽんと叩くが、セラはそこから動こうとはしない。

「いや、ちょっと二人で話したくて」
「あーそうか」

 アルマは席から立ち、二人に少し待っていてくれと告げ、セラの元へ歩いていく。

「どうした?」
「いや少し話を」
「ここではだめってことだよな?」
「うん、二人になれるところに……」
「パブロ、どこか静かなとこないか? 少し酔ってて風に当たれる場所だと嬉しい」
「前に案内した会議室から少し行くと階段があります。そこから地上にある櫓へ出られます。涼しいですし、景色もいいですよ」
「ありがとう」
「いえいえ」

 櫓へ向かう二人を見つめ、パブロはワインを口にする。

「アレでも年頃、だからね」

 そう笑うパブロにアーデは「息抜きも必要でしょう」とワインを呷った。



「えっ、全然暑くない」

 二人の間を吹き抜ける風は冷たく、タチャラの森の暑さが嘘のようだった。

「本当だ涼しいね」

 木で組まれた櫓の手すりから足を投げ出して、外を見る様に座る。外は暗闇に包まれているけど、たまに雲の隙間から月が顔を出して、草原を照らした。

「話ってどうしたんだよ」

 アルマの左隣に座ったセラは口を開こうとしない。
 ここまで戦い一筋で生きてきたアルマだが、薄々と彼女が何を言おうとしているかは察することが出来た。でもここで問い詰めても、意味がないと、アルマは一言だけ「待ってるよ」と伝え、静かに遠くを見つめた。

 魔特会の本部はシル平原とタチャラの森の境にあった。草原から吹き付ける風は背後に続く森の木々を揺らし、ざわざわと音を立てる。しかしそれが寧ろ無音と言う状況より二人を落ち着ける。

 セラはアルマに聞こえてしまうのではないかという心音を落ち着かせ、アルマの獣の左腕を取った。
 セラの柔らかな肌が毛皮越しに薄らと感じられる。小さくて暖かくて守ってやりたくなる手だった。
 最近よく女性陣にこの手を触られるなと思ったアルマは笑いそうになるが、今ではないとそのままセラに左手をゆだねる。

「たくさん守ってきたんだね」

 そう呟いた。

「いや、守れなかった」
「それは昔の仲間の?」
「フランも」
「そうだよね」
「うん」
「私たちもこの左腕に守られてるんだね」
「皆は強くなってきてるよ。まあまだ不安だけど」
「そうだね。私たちの班は失敗しちゃったわけだし」
「誰も死ななかった。気にしても仕方ない」
「私は使う魔法が治癒だから、皆に守ってもらってばっかりで」
「でも同時にセラにだって守られてるだろ?」
「ナディアちゃんが強くなったのはアルマ君たちが?」
「いや、自分でだよ。きっかけにはなったかもしれないけど」
「凄いな。なんだか皆凄くて」

 セラの手に力が入る。

「サリナちゃんは強いし、リリィちゃんは頭が良い。ナディアちゃんだってどんどん強くなってる。でも私はいつも皆に守られて」
「|治癒術士《ヒーラー》は、戦う場所が違うからな。帰る場所なんだよ。俺たちが敵に立ち向かっていけるのはセラみたいに優しい魔法使いがいるからだ」
「でも」
「みんな違う。ランスは実戦経験も豊富で、力もあるけど女癖が良くない」
「そうなの?」
「ああ。サリナとの出会いだってナンパだ」
「知らなかった」
「だろ? イギルは根性があるけど、周りとの差にコンプレックスを抱いている。セラに似てるかもな」
「そうだね」
「ロードは心が弱い。勇者って重圧と、それの称号をゆうに超えてくるのが俺たちだ。自分で何か悩んでるんだと思う」
「うん」
「一人ひとり言っていっても仕方ないけど、皆良いところ悪いところがあるんだよ。それを認めて、一緒のところにいる。それでいいんだ」
「そうだね。ねえ私は?」

 セラはアルマの左手を両手で包み込むように持った。でも二人とも目を合わせようとはせず共に草原の先を見つめている。
 本人の前で言うのは恥ずかしいが、酔いに合わせていってしまえばいい。

「セラは皆の癒しだ。それは魔法という意味でも人という意味でも。その性格とか、雰囲気とか、笑顔とか。でもそれに気付けていないのがダメなところだ」
「そう、か……。アルマ君さ、覚えてる? 初めてあった日のこと」
「えっと――。|小鬼《ゴブリン》の村で?」

 そう。アルマが魔法学園に入学したのはサリナが自分の家を訪ねてきたからだった。そしてそのサリナと再会した理由が離れ森に訓練しに来ていた際に、|小鬼《ゴブリン》に襲われ身動きが取れなくなったセラたちを救ったから。

「うん。でも本当に初めて対面したのは、その次の日の学校の教室で」
「イギルと試合をした時だ」
「そうだね。あの時なんていったか覚えてる?」
「いや、まったく」
「そうだよね」

 セラは笑った。可愛らしく、顔をくしゃっとさせて笑っているのだろうが、アルマは未だに草原の方を見つめている。

「王国軍に入るためにこの学園に入学したんだ。他の誰かと慣れ合うつもりはないから」
「俺、そんな酷いこと言ったか?」
「そうだよ。私からしたら悪い魔物から助けてくれた、お……王子様なのに……」

 敢えてアルマは反応しないように努めた。ここで彼女を茶化すのは間違っている。そう思った。

「あの時はランスともバロンともリーシュとも出会ってなかったからな。一人で生きていくものだと思ってたんだ。でもごめん」
「大丈夫。違うの謝らせたいんじゃなくてね。この人は、アルマ君は王国軍を目指してるんだって思って。私も王国軍に入れたらアルマ君と一緒にいられるって思って」

 それはもう全てを言ってしまっていないかと、戸惑うアルマだが、それをグッと堪えてセラの話を聞く。

「それで頑張れたの。私は。アルマ君のお陰で」
「それはセラの努力じゃないか」
「ナディアちゃんと一緒だね。きっかけをくれたのはアルマ君だよ」
「そうか……。どういたしまして? どう返すのが正解かわからないな」

 そう言うとセラは投げ出していた足を引っ込めて、アルマに向き直り、正座をした。
 アルマは首だけを向けてセラの瞳を見つめる。潤んだ瞳が月光に照らされてきらきらと輝く。
 本当に美しい少女だった。

「好きです。好きでした。今までも、これからも」

 頭に血が上っていくのを感じる。わかっていたがこう面と言われるとどう答えていいかわからない。だけど静かに笑った。

「ありがとう……」
「うん……」

 セラは返事を求めているのだろう。これからのこととか色々と。

「俺は皆を守りたいんだ」
「うん」
「今ここでセラがただ一人守りたい人になってしまうのが怖い」
「うん」
「全員守らなきゃダメなんだ」

 セラが包んでいる左手に力が入る。

 サリナ、イギル、ランス、ロード、ナディア、エルノ、ガルムラス、リリアーノ。
 バロン、リーシュ、イレイス。
 ベイル、エイミー。
 パブロ、アーデ、ヴェルヌ。
 リアム、レオン。
 バンディ、ガルベス、ジン。
 フラン。

 セラ。

 もうこの世界のどこを探してもいない人がいる。それがどれだけ辛いことか。悲しいことか。

「今は戦いたいんだ。自分の身を滅ぼしても戦って戦って戦って。皆が本当に幸せだと笑っていられる世界が作りたい」
「そんなんじゃあ、アルマ君は……」

 セラの瞳から涙が溢れ出す。

 自分はなんて残酷なことを言ってしまったんだろう。
 自分はなんて無責任なことを言ってしまったんだろう。

「曖昧にするのも嫌いだから、言うよ。今はセラの気持ちには答えられそうにない」
「いい! 答えなくていいから、身を滅ぼしてもなんて……言わないで」

 セラはアルマの手に顔を埋め、涙を流す。
 アルマはセラの顔爪で傷つけてしまわないように、頬を撫で、静かに抱き寄せた。

「ありがとう。一人でも俺の命を思ってくれる人がいるだけで、帰る気力になる。大丈夫、俺も強くなるよ」

 セラは何も答えなかった。でも確かに身を震わせて泣いていた。強く、でも優しく抱き寄せて、アルマは雲に隠れていく月を見つめ続けた。

 夜はまだ長い。



 泣き疲れたのか、いつの間にか寝息を立てていたセラを抱え、アルマは女性陣の部屋へと彼女を運んだ。

 にやにやしながら現れたサリナを見るに、こいつらに後押しされたんだなと確信したアルマは鬱陶しそうに、セラの部屋はどこかと尋ねる。
 セラとナディアの相部屋に通されたアルマは、ベッドの一つにセラを寝かせ、部屋を後にする。

「どうしたのよ?」

 と腹が立つにやけ顔でアルマに詰め寄るサリナの顔をぐっと押し退けて、「性格悪いぞ」と笑った。
 動じずにホールへと帰っていくアルマの後姿を見て、サリナは「つまんねーやつ」と不満そうに声を漏らした。



「これはこれはいかかでしたか?」

 未だワインを飲んでいる二人にも尋ねられたアルマは、二人には正直に好意を伝えられたことを教えた。

「で?」
「で、も、くそもあるかよ。俺にはやらなきゃいけないことがある。それまでは、な」
「そうですね。私たちにはやらなければならないことがある。では向かうとしましょうか」
「ああ」

 そしてアルマはパブロの案内の元、彼らの墓場を目指した。しかし目指すと言っても、本部からそこまでの道は地下で繋がっており、外に出た後も、警備が行き届いているらしく、悪名高きタチャラの森の魔物に襲われるということはなかった。

 続く道を歩いていくと、開けた場所に出て、そこが夢でみたあの場所だと直感で分かった。既にそこは狼の牙によって多くの景色を変えられてしまっていたが、恐らくこの左腕が覚えているのだろう。

 その開けた土地の真ん中には墓標が立っており、そこに描かれているのを見るとしっかりとシルバと刻印されていた。

「ここで」
「はい。先々代がここで共に討ち死にしている|合成獣《キメラ》と狼人族の英雄を見つけたと。酷い状況であったと言います。辺り一面には英雄の血が至る所に」
「英雄のだけか?」
「はい。それが今回お話ししようと思っていたものの一部です」

 パブロは墓標の裏にある地下への階段へ案内する。

「本部と繋がってるわけじゃないのか?」
「はい。ここは敢えて独立して」

 階段を降りると少し広めのホールのようなところに出た。パブロが壁につけられたスイッチを押すと、魔力が供給されランプに火が灯る。
 奥へ奥へとだんだんと明かりが灯っていくとそのホールに鎮座する名状し難い何かが目に入った。

「なんだよこれ……」
「|合成獣《キメラ》。その成れの果てです」
「こいつが|合成獣《キメラ》……!?」

 アルマは目の前に存在する|合成獣《キメラ》の成れの果てに、何か言葉を紡ぐことが出来なかった。

 鈍色の金属の様なもので形作られた骨格。その足元にはその金属の様なものだけではなく、見たこともないような部品が組み合わせられた何かが転がっている。
 しかしその骨格を見るに、あの夢の中で見た|合成獣《キメラ》にそっくりである。

「|合成獣《キメラ》はなんなんだ?」
「わかりませんが、生物ではないということは確かです。もちろん当初から創られた化け物だとは言われていましたが、恐らくそれは遥か生命の理から外れた遠くのものなのでしょう」
「でも夢では|合成獣《キメラ》自身が魂と」
「それこそ魂というものが何かもわかりません。仮に魂なるものが存在したとしたら、これを作り出した者は人為的な物に生命の根幹たる魂を定着させられる存在であるということ」

 自らの鼓動が早くなっていく。パブロが言いたいことはわかるが頭が理解しようとしない。

「でもそれを魔人種が作ったってことか?」
「いえ、魔人種とて貧弱な肉体を魔力で補助するくらいには、この世界の理に準ずる生命です」
「それなら……」
「神でしょうか」
「鴉ノ王」
「私たちが知りもしない世界の根幹から外れる技術を有して、人間種を滅ぼそうとする者」
「鴉……。|合成獣《キメラ》……。そうか」

 かつて「俺の名前はアルマ=レイヴンだ」と、フランを失った時にした覚悟。自らの名前は武器だから、皆の武器になると。
 しかし武器の意味を持つのはアルマだ。レイヴンは。

「鴉の武器か」
「どうでしょうか。鴉ノ王の目的が人間の撲滅だとするなら、貴方は着実にその道を辿っていますよね」
「種族の枠を超えた種族の誕生か」
「はい。人間という枠組みを人体方陣によって超越する。魔物から敵意を向けられない種族。魔人や魔物が鴉ノ王の手先だとするなら、そんな簡単なことで人の命が狙われなくなるのは理解できません。だから彼らの目的は殺戮じゃない」
「殺戮じゃない?」
「予想に過ぎませんが、鴉ノ王は世界の理から外れた種族のみの統一を目指している」
「どういうことだ?」
「魔人の魔法の発現方法は私たちとは全く以て違う。獣王の元であなたが話していた魔術の原理です。魔物と魔人は既に世の理から外れている異質な生命だとしたら? 生憎この大陸は大陸と言えど小さい。もし外にも世界があって、その大部分の生命が私たちと同じ魔術の原理だとしたら、魔人種は現存する生命体全てへの反抗種族となります。逆に他の大部分は魔人種と同じ魔術原理で、私たちが最後の世の理に逆らわない者なのかもしれません」 

 研究者たるパブロの理論をなんとか自分に合った形でかみ砕いて、吸収しようとするが、うまく入ってこない。

「やめよう。話の規模が大きすぎる」
「そうですね。事実と仮説を混濁してしまいました」
「それでお前が言っていた特異点というのはなんなんだ?」
「こちらです」

 と言ってパブロが見せてきたものは、その見た目から|合成獣《キメラ》の一部だと理解できる。

「左腕部分の部品です。触ってみてください」

 アルマはその部品に触れてみると、それが奇妙な熱を持っているの感じた。それだけでなく、薄ら心臓に合わせ脈打っているような感覚すらもある。
 ふと気付いたように自らの胸に手を当ててみると、その脈と自らの拍動が全く同じリズムを刻んでいることの気付いた。

「どういう原理なのか全く以て理解できません。貴方の中に眠る|合成獣《キメラ》はこの骨格を求めているのか。その腕はどこから現れたのか。この左腕の部分が奇妙な生命活動を見せ始めたのは、そうあなたが王国軍選抜試験で魔人を退けた日と一致するのです」
「俺の身体が魔物に変わっていくほどに、|合成獣《キメラ》の成れ果てが命を吹き返しつつあるとでもいうのか?」

 恐怖と怒りが混ざった声音だった。しかしパブロは冷静に淡々と続ける。

「わかりません。これからこの|合成獣《キメラ》の成れ果てに対する警備は強化するつもりでいます。それと同時に貴方との繋がりがどういう原理であるのか調べていくつもりです」
「そうか……。味方になってくれたら強いんだけどな」
「そうですね。先の戦争で、多くの種族を恐怖に陥れた破壊の獣、|合成獣《キメラ》の成れ果て。戦力としては十分すぎる」
「酔っていないと聞き入れ難い事実だったがな。用意周到なのは評価できる」
「これはこれは」

 そう笑ったパブロは「まだ飲みますか?」と酒を飲む仕草をして見せたが、明日から訓練だ。

 アルマは早く眠ると言い、墓場を後にしようとした。

 その瞬間だった。
 アルマたちの目の前に黒い影が飛来したのは。

次話


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  • 最終更新:2020-06-21 23:52:22

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